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最初は「モーリス」だった。 二度目は「さらば我が愛〜覇王別姫」。 三度、男が男を愛する想いに嫉妬することはないと、たかをくくっていた。 今夜、「Brokeback mountain」を観にいくまでは。 長女として生まれ、年子の妹がひとり。 亡父は男の子が欲しかったともらしたことはない。 だが、お転婆娘の武勇伝を聞きながら 「おまえはな、お母さんのお腹に部品を忘れてきたんだよ」 そう、くしゃくしゃの笑顔で言った記憶がある。 迷いなきジェンダーに象られた世代ではあったが 「女だから」「女のくせに」という枕詞なしに育ててくれた。 見てはいけない月刊誌も週刊誌も盗み見する文学少女は 性の知識に関して早熟であったが、案外と性の自覚は疎かった。 ジェンダーから自由であったことで、授かった性の恩恵を 「マイナス要素」よりはるかにカウントできた。 幼い頃から「不明瞭で曖昧でふわふわしている女の子たち」より 「分かりやすく、白黒はっきりし、打てば響く男の子たち」を 友だちとして多く持っていた。 もちろん自我に目覚める年齢となれば、 「分かりやすく、白黒はっきりし、打てば響く女の子たち」ともめでたく巡り逢えた。 一方、「不明瞭で曖昧で謎だらけの男の子の魅力」にひれ伏すことも知ってしまった。 つまりは、男も女も染色体一本の違い。 あとは単体が個々に持つ、その人だけの素晴らしさ、あるいは 受け入れ難い要素があるだけ。 生涯の伴侶となる人は自分で選んだ。 夫もまた自分で選んだと認識してくれている。 どちらかがどちらの手を無理にひっぱったのではない。 いわば主体的な選択が合致した!ゆえに、四半世紀をともに過ごし 比翼の鳥、連理の枝・・と大袈裟に歌わずとも、隣に居るのが 最も自然で愛しい存在となっている。 万が一、浮気というスペシャルな事態が降って湧いたとしても 私が夫の相手たる女性に嫉妬を感じることはないだろう。 焦燥や憎悪も湧かないと思う。 親指と人差し指で、火星まで弾き飛ばすだけ。 この居心地よいバランスには不似合いな存在として。 映画から恐ろしく話が逸れてしまった。 仮に・・仮に・・夫が男を愛したら、私は白旗をあげる。 唐突な話ではあるが、ありえないことではないと思う。 「生きる」という基本的な営みにおいて、ある種の飢餓感を抱いた際 そこに飢餓を満たすに相応しい存在として、男がいたら? 私はイニスの妻、アルマと同じ敗北感を抱くばかりだと思う。 アルマは一瞬で悟った。自分がイニスにとっての最愛の存在ではないと。 社会的な価値観に背いてなお愛しい存在。 逢えない時間が、その繋がりを些かも衰えさせない存在。 日常的現実の中で育まれた愛が、義務の範疇に追いやられる存在。 離婚という「救済」を得たにせよ、アルマの無念は察するにあまりある。 「モーリス」はまず愛の概念があり、そこに身を投じることで 自分の求めるべき方向を見出していった。 愛を教えたダーラム卿は主流価値観に身を戻し、モーリスは 愛の対象を別に探し出すことで、愛と生を一致させた。 「覇王別姫」は幼少期の守護神たる段小樓に対し、蝶衣が愛を見出したのは 必然的とも言える。京劇の役との交錯が、段小樓を彼にとっての 唯一の愛の対象として見なすことを、より自然にした。 「ブロークバック・マウンテン」のイニスとジャック。 番犬と同レベルの過酷な仕事、帰るべき家庭はなく はるか遠い夢と、ぎりぎりの現実という共通項。 山中で焚くなと命じられた火が消え、凍える闇が襲う。 「凍える闇」に互いの孤独と飢餓を癒すのは互いしかいない。 行為から始まった二人ゆえ、戸惑いがあったのだろうか。 身体の声に従ったことを、社会通念という衣を着たままの精神は 潔しとしない。山を降りたあと、イニスが嘔吐する姿が示す。 年月は行為を消化し、やがて精神の中に取り込んでいくのだが。 イニスもジャックも妻や恋人、愛人を持つ。 この物語、女はおしなべて饒舌な性として描かれる。 饒舌さが男を黙らせ、迎え入れるようでいて、実は門前払い。 閉ざされた門の前で途方にくれる男たち。 男と女の魂レベルの合致を疑問視するかの構図が見えてしまう。 この監督、良き女ともだちに出会ってないのか・・。 イニスとジャックは寡黙に愛し合う。 言葉で説明し合う必要など、どこにあるのだ?と苦笑するかに。 短い手紙の遣り取りはその一つの象徴だろう。 しかし、someting great がかくも女をお喋りにしたわけは けっして気まぐれからではない。 相手を思い遣るほど、自分以上に相手の想いを手厚く扱おうとするほど 実は微かな行き違いが生じるものだ。 女のお喋りはその微調整のために存在する機能。 ただし、主体者の技量、懐の広さ、さらには愛そのものの深さにより 機能の働きはさまざまと言えるが。 メキシコで男娼を買ったジャックを、イニスは責める。 自分の愛情の本気さが、ジャックに理解されていなかったかの 屈辱からであり、嫉妬とは姿が違う。 同時にジャックの本気であるはずの愛情が肉欲に覆われたものと 疑った悲哀も滲んでいた。行為から始まったゆえに、昇華した互いの想いに かすかな後ろめたさがあったのだろうか? 家族への裏切り(体裁は繕っていたにせよ、子供たちへの愛情は 父親として真実であったにせよ)は社会的存在として生きることを 選択したゆえの代償。 一番求める相手、最愛の人とともに生きることが、ひな型的「幸福」とは 必ずしもならない・・価値観の呪縛と言えばカッコいいが 人は愛だけでは生きられない、愛なくしては生きられない宿命ゆえ。 20歳の二人が互いに殴りあった時の、イニスの血染めのシャツ。 ブロークバック・マウンテンに置き忘れたと思っていたが 20年間、ジャックが自分のシャツに重ねて持っていた。 男は最初の行為でしるしの鮮血を残すことはない。 だが、袖口の血はまさに、最初の純愛を捧げたしるしに見えた。 ジャックの遺品として、シャツを持ち帰ったイニスは 今度は自分のシャツの下にそれを重ねる。 ジャックが求めた行為が、どれほど深い想いから生じたものか 重なったシャツを見て改めて確信できた、悔しくも愛しい想い。 結婚の報告に来た娘が、セーターを忘れていく。 イニスは丁寧にたたみ、クローゼットにしまう。 ジャックと自分のシャツが重なって吊るされたクローゼット。 ろくに家具もない部屋で、その小さなクローゼットは イニスのかけがえない存在をしまう場所。 娘のセーターをしまったことで、秘匿の闇ではなく 日常の生にやっと位置づけられた、ジャックとの愛の交歓が切ない。 そのジャックはもはや、腕に抱く熱を持たない存在なのだから。 イニスのトレーラーハウスにある永遠のブロークバック・マウンテン。 自身に正直な愛だけがそこに宿る。 He was a friend of mine Because he was a friend of mine・・・ 繰り返し流れる歌詞が、アコギの響きとともに残る。 アコギの音色に空を渡る雲の沈黙の歌が重なる。 ハモニカは調子ハズレこそが哀しく、切ない。 |
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| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|---|
ブロークバック・マウンテン(50)
ついに50記事目です、はあ〜。ビョーキ度もいよいよ深まってきましたが、まだまだ ...続きを見る |
やっぱりゲイ術が好き? 2006/03/27 07:56 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
お邪魔致します(靴を揃えて)。 |
栗本 東樹 2006/03/27 02:44 |
栗本さん、おはよう♪ |
body&soulIV 2006/03/27 07:54 |
はじめまして、びあんこと申します。栗本さん宅から飛んできました。 |
びあんこ 2006/03/27 07:54 |
body&soulIVさま |
びあんこ 2006/03/27 07:58 |
びあんこさん、おはよう♪ |
body&soulIV 2006/03/27 08:20 |
拙ブログにもコメントをありがとうございました。 |
びあんこ 2006/03/27 09:37 |
はい、びあんこさんのお部屋に足跡を♪ |
body&soulIV 2006/03/27 12:36 |
おはようございます♪ |
栗本 東樹 2006/03/28 08:38 |
栗本さん、おはよう♪ |
body&soulIV 2006/03/28 09:21 |
「本を読む度、男に嫉妬する」 |
M 2006/04/04 22:37 |
Mさん、おはよう♪ |
body&soulIV 2006/04/05 07:46 |
ま、空蝉の世に在ろうが、 |
M 2006/04/09 17:48 |
Mさん、こんばんは。 |
body&soulIV 2006/04/09 22:54 |
>「いい人生だったよ、オマエがいたから」 |
M 2006/04/11 00:00 |
Mさん、おはよう♪ |
body&soulIV 2006/04/11 08:19 |
書きたい、書こう、書けない・・・ |
M 2006/04/11 22:11 |
呼吸のように |
body&soulIV 2006/04/11 22:50 |
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